むはむは七本目! この映画は面白いですよ~。
舞台は1948年、戦後直後のイタリア。イタリアといえば日独伊三国同盟の中で早々と散った敗戦国です。そんな戦後直後の敗戦国の姿がリアルに描かれています。
アントニオは二年間の失業の最中、やっと仕事をみつけます。それはポスター貼りのお仕事。しかしその仕事をするには自転車が必要です。
でもアントニオは金を作るために自転車を質屋に入れていました。しょうがなく妻がシーツを売って自転車を取り返します。
仕事が出来ると喜ぶアントニオ。そんな父を見て喜ぶ子どものブルーノ。
二人は自転車で出かけ、アントニオはポスター貼りの仕事を懸命にやり続けます。しかし、目の前で大切な自転車が盗まれています。
アントニオはなんとか自転車を探すが見つからない。警察もアテにならない。友人に助けをもとめマーケットに行き、売られている可能性の高い自転車を探すがやはり見つからない。
どうしたものかと頭を抱えるブルーノですが、ついに犯人らしき人と老人が話しているのを見つけます。しかし犯人はどこかへ行ってしまい、老人をつかまえますが、老人には逃げられてしまう。
どうして老人を逃がしたんだと責めるブルーノを、アントニオはついぶってしまう。ブルーノは泣きじゃくり怒りをあらわにします。
アントニオはお詫びにと、お高いレストランにブルーノをつれていきます。しかししょせん貧乏人。肩身が狭い。
そしてやっと犯人(アントニオが疑ってるだけ)を追い詰めますが、証拠がないので当然犯人を追及することも出来ず警察も証拠がないのでは話にならないと言います。
アントニオは犯人を必要以上に問い詰め、大勢の町の人達に「ふざけんじゃねぇ!」と迫られ、アントニオは死ぬほどの屈辱を感じ、その場を去ります。
もうどうしようもない。そう思って町で座り込んでいると、大量の自転車が置かれている場所が目に入ります。後ろをみるとアパートの前に自転車が一つ。
アントニオは善意と戦います。やがて、サッカーの試合を見終わった人達が自転車に乗って帰り、大量にあった自転車はなくなります。
アントニオはついに、アパートの前に置いてある自転車を盗みますが、あっけなく捕まります。しかし、持ち主の人はブルーノの姿を見て、アントニオを見逃します。
罰せられることすらされず、アントニオとブルーノは、街の雑踏の中に消えていきます。
これは面白いです。貧しい国とはこういうものだ。というのをリアルに描いた映画です。今の日本人はこの映画を観るべきだと思います。
仕事がない。だから金がない。生きるので精一杯。だから夢なんか持てるはずもない。そうなると世は腐ります。でも、そればかりはもうどうしようもない。だって貧しいんですから。世の中は一部の人間が甘い蜜を吸うように出来ているのです。
どれだけアントニオががんばって仕事を探しても、チャリを盗まれ犯人は捕まらず、自分はみじめな思いをして、息子と歩くことしかできない。見栄をはって行った高級レストランでは、他の裕福な客達との差を感じ更にみじめになる。
ハッキリとしたオチはないです。ただ「どうしようもねぇ」といったかんじで、街の雑踏の中に消えて終わるのです。そこがあまりにもリアルすぎて、切ないです。
こういう映画を、ネオレアリズモというらしいですね。今の時代だからこそ、こういう映画が必要でしょう。
クソみたいな綺麗事を並べたドラマやアニメなんて、よけいにむなしくなるだけでなんの意味もありません。綺麗事を言ってごまかすくらいなら、チャリ盗んだ方がまだマシです。
[2回]
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